2011年8月7日日曜日

田中俊一氏講演スライド「その他の課題」

第四回原発対策国民会議における田中俊一氏の講演スライドより

スライド37

「厳しすぎる食物摂取基準値による被害の拡大」


保守的な仮定
・年平均濃度とピーク濃度の比をEUでは1/10に対して、1/2を仮定  ⇒  5倍
・Sr-90/Csの比を0.1と仮定(実際は、0.01以下)                            ⇒  5%
・食品摂取量について調査結果1365g/日を1600g/日と仮定          ⇒ 17%
・全ての食品が汚染されていると仮定                                          ⇒ 非現実
・米へのセシウムの移行係数を10%と仮定〈平均データは1%以下)
                                                                                                      ⇒耕作制限地の拡大

セシウムー137の内部被ばく換算  1mSv/72000Bq
★ 伊達市のキロ当たり580Bq梅を一年間に10kg食べた場合の被ばく量は、75μSv。
★ 神奈川県の新茶から、570Bq/kgのセシウムが検出されたことで、出荷自粛措置がとられたが、これは一年間に135kgのお茶を食べた場合、1mSvになる値である。
☆ 海水浴場の基準:10リットルの海水を飲むと7μSv。

スライド38

被ばく線量基準の決め方、適用には課題が多い

その1:計画的避難区域
  100mSvまでは、「直ちに影響のでるレベルではない」といいつつ、来年3月11日まで現在の地に留まって生活を続けた場合、積算線量が20mSvを越えることになるという予測に基づいて避難。
  → 緊急時ひばく状況(年間20-100mSv)
その2:学校の基準
  現存被ばく状況(年間1-20mSv)にある福島市や郡山市等の学校の基準は、当初は年間20mSvを適用、その後、年間1mSvを目標とすると訂正。(父兄等の心配と混乱)
  → 成人、子供、妊婦の区別なし。
その3:従事者の緊急時被ばく線量の扱い
  福島原発の事故収束に向けた作業者には、緊急時ひばく限度として250mSvが適用されている。一方、通常の職場では、年間50mSv、5年間で100mSvの被ばく限度が適用される。
  福島原発での被ばく線量を通常の被ばく線量と別扱いしないという厚生労働省の通達が適用されると、福島原発での作業者はその後、他の職場での仕事が出来なくなる。
  → 緊急時と平常時の基準が交錯(省庁縦割りでは現在の状況は乗り切れない)
その4:放射性廃棄物の基準
  廃棄物処理施設の周辺住民被ばくは1mSv/y以下。処理業者も電離則に沿って1mSv/y以下。埋設処分管理期間終了後は10μSv/y(6月3日安全委員会)
  → 福島県の状況を認識しない無責任
ガレキは8000Bq/kg以下なら一般廃棄物として処分可能(環境省)
  → 汚染のスクリーニングは事実上不可能

スライド40

国は住民に対する適切な発信ができていない

・事故当初おいて、適切な原子力防災対応をしなかったことで、避難指示を受けた多くの住民は飯舘村などに避難した。つまり、国の適切な発信がなかったことにより計画的避難区域では無用の被ばく、特に子供達が被ばくをしたということに極めて強い怒りと不信感がある。

・避難を余儀なくされた住民は、戻れるか、いつ戻れるかということで、絶望感と望みの中で揺れ動いている。国は具体的に除染の取組みを始め、こうした不安に応えることが急がれる。また、避難住民の大きな悩みの一つは仕事の喪失であり、住民は除染作業に参画し、安定した仕事を持ちつつ復帰できることを強く希望している。

・福島県民は、放射線被ばくに対して強い懸念を抱いている。特に、子供達の被ばくについての母親の心配は極めて深刻であり、子供達の生活環境の放射線量の低減化を図りつつ、放射線による健康影響について、正しく理解できるような取組みが必要である。

・福島市等の学校では、30度を越すような日でも校舎の窓を閉め切ったり、マスクをして授業を行っているが、これは意味がない。国(文部科学省)の測定では、飯舘村や川俣町も含めて3月末からは特別の対応が必要な空気中の放射能は観測されていないことを踏まえて、適切なアドバイスをすべきである。
  同様のことは、洗濯物を外で干すとか、布団を干すということにも当てはまるもので、生活者の立場での適切な発信が大事である。

スライド41

「大気中の放射能」


空気中には放射能がないので、窓をしめたり、マスクをしたり、長袖を着る効果ゼロ。洗濯物、布団も外で乾燥させても問題はない。

スライド42

国(政治)が取組むべき緊急課題

① 国の責任で放射能除染に早急に着手すること
  ・国が責任をもち、除染は各自治体に委ねること。
  ・除染活動には地元住民の協力を得て、当面の労働(雇用)の機会とすること。
  ・避難住民の復帰は、2年程度を目処に取り組むこと(復帰への希望がもてること)。
② 放射能除染に伴う廃棄物の最終処分方法を早急に提示すること
  ・産業廃棄物でもなく原子炉規正法上の廃棄物でないが、安全な管理処分は極めて容易である。
  ・広域除染、数千万トンに及ぶ廃棄物の処分場は、各自治体、または県が責任をもって用意すること。
  ・放射能汚染を除去するためには最終処分場が不可欠であることを住民に理解してもらうことが
必要。(首長の指導力と覚悟を支援する国の協力が不可欠)
  ・簡便さとコストを考慮しない処理・処分方法は現実性がない。(思いつきの提案は混乱の原因)
③ 住民(福島県民)への適切なアドバイス
  ・現存被ばく状況にある地域での日常生活のすごし方(ストレスを少なくするための方策)
  ・空気中ダスト測定結果を踏まえ、マスクや長袖着用、窓を閉め切った生活の無意味さを説くこと。
  ・汚染地域での農作物へのセシウム取り込み防止の方法を提示すること
  ・食品摂取に関する基本的な注意
④ 住民に対する健康管理
  ・小児・子供、女性(妊娠可能)に対するセシウムの健康影響について、住民が納得できる説明が必要(現状は不安と疑心暗鬼で大混乱状態)
  ・子供への積算線量計の配布については、測定結果をサポートすることが必要。
  ・個々の住民の被ばく量の推定と長期的な健康管理体制の構築

以上

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