2011年11月17日木曜日
福島原発事故に係る主な課題:2011年3月31日
科学史技術史研究所 » Blog Archive » 元原子力委員など福島原発事故・緊急建言/日本学術会議提言
福島原発事故についての緊急建言・福島原発事故に係る主な課題(pdf)
福島原発事故に係る主な課題
当面の最重要課題は、大量の放射能を環境にださない工夫をしながら、原子炉と燃料プールの使用済燃料を連続冷却すること(循環余熱除去システムの復帰)。
・ 必要なことは、電源を復帰させ、余熱除去システムを稼動させることで、一刻も速やかにこれを達成すること。
・ 作業を速やかに実施するためには、作業環境、作業体制を整えること。
― 作業場の放射線量をできるだけ下げること
― 重層的な作業体制をつくって、24 時間体制で実施できるようにし、個人の被ばく線量を抑制すると同時に、作業者が適切な休養・栄養・睡眠をとって思わぬ災害やトラブルを起こさないようにすること。
高レベルの放射線量下での作業は、2-3 時間で交代できるようにすべき。
・ 前線の作戦本部はサイトまたはオフサイトセンター内において、サイト内の現場作業と一体となって取組む(被ばくも苦労も分かち合うこと)。
・ 一個人に役割を集中させず、柔軟な役割分担も必要(現場所長等の超過労に配慮)。
制約条件
・ 炉心や燃料プールの冷却を欠かすことができない。しかし、冷却を継続していても溶融炉心は、徐々に圧力容器壁を溶かし続けるので、時間的な制約がある。
・ 水素は発生しており、細心の注意が必要。
・ 高レベルの放射性排水の処理は、極めて困難。多くの放射線源が分散しており、適切な放射線管理と遮蔽対策が必要。
・ 高レベル廃液は、移したところが放射線の発生源となるので、遮蔽が必要。
絶対に維持すべきことは、圧力容器と格納容器の閉じ込め機能と、使用済燃料プールの水位の維持
閉じ込め機能維持
・ 格納容器の圧力を下げるとか、水素爆発を除くために排気すれば、格納容器内の放射能の一部が環境に出る。
・ 燃料が破損・溶融したため、格納容器内には莫大な放射能が溜まっていると推定されるが、その量は不明。
・ ドライベントのように、放射能を環境に排出せざるを得ない事態には、住民、自治体に衆知し、適切な対応を要請すべし。
使用済燃料の破損防止
・ 使用済燃料プールの水位が下がり、燃料が空気中に晒され、除熱できなくなると燃料被覆管であるZr合金の温度が上がり、Zr-水(水蒸気)反応が起こり、被覆管が破損し、内部の放射能が環境に放出される。
・ 既に、3号機と4号機の使用済燃料ではこうした事態が一旦起ったようであるが、これ以上被覆管が破損し、さらに大量の放射能が放出されるのを防ぐためには、燃料を完全に水没させておくことが極めて重要である。
生活環境に放出された放射能対策と避難住民の復帰対策
・ 広範に放出された放射能の詳細な測定と影響評価
― 空間線量(積算線量)、土壌汚染、飲料水汚染の実態と評価
― 核種・線量の汚染マップの作成
・ 野菜等の風評被害対応
科学的で信頼できる評価と説明(個々バラバラの説明はよくない)
・ 相当の広い範囲でセシウム 137 等による汚染があり、レベルに応じた対策が必要。
・ 避難住民の復帰シナリオの提示
・ 必要に応じた健康診断
サイト内の放射能対策は、短期課題、中・長期課題に分けて対応すべし。まず、安全に安定化、その後大量の放射性廃棄物の処分
・ 当面は、放射能が環境に逸散するのを防ぐ手当てが必要(密閉管理)
・ サイト内に広がっている放射能対策
― 汚染されている土壌等は、できるだけまとめて放射能粉塵の飛散を防ぐ措置
― サイト外への飛散を防ぐことと、サイトでの作業者の被ばくを減らす上で重要
・ 大量の高レベル放射能排水の処理・処分
・ 使用済燃料の始末(長期)
・ 原子炉の始末(長期)
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