2018年8月31日金曜日

多核種除去設備等処理水の取扱いに係る説明・公聴会(富岡会場) 福島県漁連会長 意見表明

多核種除去設備等処理水の取扱いに係る説明・公聴会 (METI/経済産業省)

http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/setsumei-kochokai.html

≪富岡会場≫ ・当日表明する意見の概要(PDF)

http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/HPup3rd/iken1.pdf

多核種除去設備等処理水の取扱いに係る説明・公聴会(富岡会場 動画)

http://www.ustream.tv/channel/4sXWB6khpu3

平成30年8月30日 福島県漁連会長 意見表明 1:53:30~

※かっこ内は「当日表明する意見の概要」に含まれていない部分。動画より文字起こし。

(福島県漁連の野崎でございます。本日はトリチウムの性質、トリチウムの処分方法についての技術的考察、トリチウム処分についての社会的影響及び対応についての考察等、トリチウムタスクフォース及び小委員会の委員の方々のご努力、多年に渡る御議論を踏まえて、議論の取りまとめの中間段階における公聴会であるという位置付けで意見を表明させていただきます。本当に御苦労さまでございます。まず福島県漁連としては)

【意見】

ALPS処理水の取扱については、広く国民的な議論を経て国が判断し、国がその責任を負うことを明確にすべきものである。
国民的議論が行われておらず、国民(や未だ輸入規制を継続している諸国)の理解を得られていない現状では、福島県の漁業者として、ALPS処理水の海洋放出に強く反対する。

(これが県漁連の意見でございます。その理由として5点ほど挙げさせていただきます。)

【理由】

①これまでの放射性物質モニタリングの結果、ここ3年間、海産魚介類から基準値を超える検体の出現がなく、漁業関係者は、時間の経過とともに確実に放射性物質の影響が低下していることを実感しつつ、試験操業の規模拡大に取組んでいるところである。
(本年ではまだ水揚げ量は事故前の2割程度でございます。しかし国内における未だに風評被害があり、国外においても輸入規制を継続している諸国がある中)
このタイミングでのALPS処理水の海洋放出は、福島県の漁業に壊滅的打撃を与えることは必至で、これまでの努力と再興意欲を完全に奪ってしまうものである。
(加えて基幹産業は、その数倍程度の関連産業を産み出すと言われており、福島県の浜通りの復興においても漁業の復興は重要であり、福島県の漁業に壊滅的な打撃を与えることは福島県の復興に壊滅的な打撃を与えることと同義であると考えます。)

②汚染水対策である地下水バイパス、サブドレン排水の実施協議の際、福島県漁連からはALPS処理水の取扱について「発電所内のタンクにて責任を持って厳重に保管管理を行い、漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わないこと」と要望し、東京電力からは代表執行役社長名で「多核種除去設備で処理した水は発電所敷地内のタンクにて貯留いたします。」との回答を。
経済産業省からは経済産業大臣臨時代理国務大臣名で「関係者の理解なしには、いかなる処分も行いません。」との回答を得ている。
(このように福島県の漁業者は海側遮水壁のためのバイバス事業、凍土壁のためのサブドレン事業を、ひとえにALPS処理水の海洋放出を避けるためタンク保管を前提にして協力してまいりました。ちなみにバイパス・サブドレン事業における地下水の海洋放出は、放射線量管理の元、いっさい希釈は行わず規定の放射線量以上の地下水はタンク保管をしているのが現状でございます。)
さらに、第3回廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議にて決定された、中長期ロードマップには、「液体廃棄物については、地元関係者の御理解を得ながら対策を実施することとし、海洋への安易な放出は行わない。海洋への放出は、関係省庁の了解なくしては行わないものとする。」と記載されている。

③国はトリチウムの安全性を強調するが、そもそも一般人が放射性物質に関する情報に接するようになったのは、原発事故が契機であり、未だ十分な知識を有していない。
また、専門性が非常に高い分野であることから、放射性物質についての性質や特徴、危険性について、正しく国民に認識されているとは言えず、仮に1000 兆ベクレルもの大規模海洋放出となれば、その数値の大きさだけが先行し国内外で混乱を来し、風評被害を惹起するのは必至である。
我々は、風評の払拭には想像を絶する精神的、物理的な労苦を伴うことを経験している。
ALPS処理水の海洋放出は、試験操業という形で地道に積み上げてきた本県水産物の安心感をないがしろにし、魚価の暴落、漁業操業意欲の滅失、ひいては漁業関連産業の衰退等を招き、福島県漁業に致命的な打撃を与える。
正に築城10年、落城1日である。

④今般のトリチウム水タスクフォースで検討された5つの処分方法、地層注入・海洋放出・水蒸気放出・水素放出・地下埋設は、廃炉作業において初めて能動的に放射性物質を環境に放出するものであり、国民的議論は必須である。
(本タスクフォースは、検討が開始された時期には、タンクからの汚染水漏洩が頻発し、また汚染水発生量が多く、タンクの空き容量が逼迫していた時期でもあり、タンクの汚染水保管という選択肢はあらかじめ外されております。しかしその後、タンクは強固な溶接型に置き換えられ、管理体制も整ったことから、現在ではタンク保管が最も風評被害のリスクが少ないものと考えております。)
「廃炉の進捗及びリスク低減のためのエリア確保等の必要性」という主張をもってALPS処理水の処分を論じるのは、余りに唐突であり泥縄感が否めない。
デブリの保管場所については廃炉における最重要課題であり、ALPS処理水の処分と同時並行的に検討するという記載はロードマップにはない。

⑤ALPS処理水処分については、国民的議論が前提であり、
(福島県の漁業者が反対しているため、ALPS処理水の処分が進まないということが広く言われておりますけれども、)
福島県の漁業者だけで判断すべき問題では無く、広く国民へトリチウム発生のメカニズム、危険性を説明し、取扱に係る国民的議論を尽くし、国民の信頼(や未だ輸入規制を解除していない国の理解)を得た上で国が判断し、その責任を負うことを明確にすべきである。

(以上、御清聴ありがとうございました。)

※国により公聴会表明意見のテキストが公表された場合は、記事を削除します。

2018年3月31日土曜日

岩代國南會津郡大桃村鱒瀧之圖

新日本古典籍総合データベース / 水産小學
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100249682/viewer/1

岩代國南會津郡大桃村鱒瀧之圖
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100249682/viewer/40


“岩代國南會津郡大桃村に、鱒瀧と唱ふるものあり、此ものハ高さ二丈餘の大瀧に、藤蔓の袋網二ツ三ツをつりをき、鱒登らんとして、登り得ず、中途より落るもの、皆此袋に入るを捕るなり、此瀧に魚ばしごを設け、或ハ鱒鮏の種川となし、魚苗の繁殖をはからバ、尤よろし、又擬虫といふ一種の鮏釣あり此ものハ、華麗なる鳥の羽、或ハ獸の毛を以て、魚の常に好むところの、羽蟲と誤り認めて呑ましめ、餌を用ひずして捕るものなり、”

2018年3月30日金曜日

水産小學 河原田盛美 著 明治15年(1882年)

新日本古典籍総合データベース / 水産小學
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100249682/viewer/1

人為にて魚卵を魚にかえす仕方ハ古へよりひらけたりや
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100249682/viewer/108




◯人為接合の術を施し、魚卵を孵化する法ハ、西洋紀元前二千百年代の頃、創めて支那に起り、其來る久しといへども、無經に属し、只其名目を存せしに過きず、然るに其法の漸々歐米各國に行はれしより、日に精巧を極め、數種の魚を彼此移養し殊に鮏・鱒の如き、佳種を繁殖せしめ、大に國民を裨益するに至れり、我邦に於ても、其方法を傳習し、先づ試みるに鮏鱒の二種を以てし、現に其孵化生育の結果を得るに及べり、鮏魚ハ、卵を産んとするに先ち、河に溯り、八月中旬より、河水に在り、十月下旬より、十二月上旬まで、に、卵を産むものとす、又鱒魚ハ、卵の熟するが故に、鮏魚よりも、河水に居るの日久しく、大抵春三月下旬より、河に溯り、九月下旬より、十月に至り、卵を産す、故に産卵の季節ハ、稍相異なれども、成熟の景況、雌雄の區別及び、接合の術孵化成育の方法等?、鮏鱒の兩魚粗ぼ同しきものとす、又此兩魚ハ、池に畜養し、成長の後ち、河に放ちて、繁殖せしむるを得るものとす、而して、其産卵の季節に迫れば、形状憔悴し、全體黒色を帯び、腹部に紅紫黒の斑文を現ハし、雌魚ハ、陰孔墳起、腹部膨脹して、蚤形を為す、指頭を以て之を按すれバ、腹中にて、卵の動揺するを覺へ、雄魚ハ、唇肉減じ、齒形鋭く、其状自ら雌魚より威あり、故に一目して、其雌雄を辯ずるを得べし、既に斯の如き景況に至れバ、人工交接の術を、施し、卵を得るに適するの季とす、故に一個の水糟を備へ置き、其一槽にハ、雌魚を入れ、一槽にハ、雄魚を入れ、雌雄を別ちて養ひ置き、母魚の良否及び熟不熟を撰ミ、魚を驚駚?せざるやう、先づ雌魚を捕へ、甲ハ雙手を以て、頸より顋下を握り、乙は尾部を握り、丙は拇ト食指の加減を以て陰孔より卵を按出するやう、徐に魚腹を撫下して、卵を皿鉢の如き器の内へ産ましむべし、此際に魚の潑刺する時ハ、魚體整はず、卵の出でざるものなれバ、能く魚の静止するを認め、て、其腹を撫下すべし、卵を産ましめし後ハ、直ちに雄魚を捕え、前に同じき仕方にて、其の精液を卵上に洩らさしめ、嫩柔なる刷毛、又は鳥羽を以て、卵と精液とを、能く調和し、少しく清水を注ぎて、徐に之を攪拌すべし、精液乍ち、卵に感觸し、卵ハ恰も、橙子色を現ハすに至るべし、是れ即ち、精液の卵中に迸射し、接合の成りたる徴とす、而して、水を充分に、卵上に注加し、二十分時間を經たる後、更に其水を換へ、卵に貼着せし、液汁を能く洗去り、之を孵卵器に移し、水に浸すべし、水ハ晝夜間斷なく、流通せしめ、瞬時も、涸せしめざるを専要とす、又其孵卵器ハ、陶造木製の、各種あれども、扁・柏・杉等の板を以て水凾を造り、木脂を防ぐ為め、木膚を焼き、或ハ之に吧嗎油を塗るを簡便とす、其凾の底にハ、砂礫を敷き、其上に卵を並べて、凾の上端より水を注ぎ入れ、其下端より注ぎ出さしめ、常に水を過不及なく、凾内に循環せしめ、且水垢及び、有害物を除く為め、別に漉水槽を設け、水の其槽を經過して、孚卵凾に注くやう、装置すべし、而して護模製の氣管を以て、時々卵を掃除し、總て清潔なるを要す、斯くの如して、晝夜を論せず、育養する時ハ、全く感觸せし卵ハ、日を經るに從ひ、淺紅色を帯び、漸に膨脹して、頗る堅實なるを覺ゆれども、感觸せざる卵ハ、次第に黄白色を催し、濁白色に變じ、遂に死に至れり、卵の生死ハ瞭然之を辯明するを得可く、又死卵病卵ハ乍ち腐敗して、他の卵に傳染し、健康を害するの懼れあれバ、把卵器を以て、死卵を除棄すべし、接合術を施せしより、凡三週間を過ぐれバ、卵中に血條を生し、小黒點を現出す、是即ち魚眼にして、必ず孵化すべき徴證なり、此卵を他處に運搬するにハ、此時を以て適期とす、其搬運の法ハ、水苔を以て、之を凾詰にす、而して凾ハ其類種々あれとも、最も容易なるハ、長さ一尺四五寸、幅八寸、深さ四五寸とす、鮏卵なれハ、一列に、大約二千餘を並べ、凾の四面に空氣を流通せしむる為め、數個の孔を穿ち、その底にハ、塵芥なき、柔嫩なる水苔を濕ほし、之を敷き、其厚さ凡一寸許、又其上に柔嫩なる麻布を敷き其上に卵を重畳せざる様、一列に並べ、又更に前の如く、水苔と麻布とを敷き、以て卵を並べ、此の如くする凡三層とし、此凾數個を適宜に組み重ねて一荷と為し、更に外套を以て覆ひ、外套と内凾との間ハ、四方二寸許の空隙を存し、是に填するに栗・櫧・蕨等の枯葉を入れ非常の寒暖に觸れしめざるやうにすべし、また搬運の際務て、其箱を激動ならしむべからす而して、運搬の地に達せし時ハ、直に凾中の卵を、孵化器に移すを良とす、若し装置の未だ完整せざる時ハ、該当の儘、風日の映觸せざる所に置き、頓て孵化器に移養するも妨げなし、魚卵の孵化して、魚?(魚偏に米)となるときハ其臍に、嚢様の胞衣ありて、内に天賦の滋養物を有する為め其胞衣の存する間ハ、縦令餌を與ふるも食ハす、常に水底に安息す故に之を食嚢と稱す、而して其胞衣ハ漸に減少して、凡五六週間を經るときハ、全く消収し、魚?(魚偏に米)自ら養器を游泳して、餌を需るが如き徴を現はす、其時始めて、餌を與ふべし、其餌ハ、鶏卵を煤煮し、其卵黄を與へ、或ハ牛の肝臟腎臟を能く煮熟し、細末とし、又は、蚕(夕に虫)蛹粉を、牛肉及び、卵黄に和したるものを最も良とす、而して更に日を逐び、成長、多量の餌を要するに至れば蚕蛹粉を、小麥粉と煉り合せ、滾湯中に投して、能く煮たる後に、細粉となして與ふ可し、鮏・鱒ハ、元來動物を食と為すものなれバ、孑孑・蚯蚓・蝌蚪及び、其他の水虫を嗜み食ふべし、餌を與ふる頃に至れバ、大なる育魚凾に移養し、生長して、凾内稠密なるに至れバ、之を池水に放ち養ふ可く、その育養ハ、池の廣狭と、其湧水の多少とに由り、魚數自から限りあれども、初めの半年間ハ、一坪の池水に、平均千尾より、二千尾を養ひ、後の半年間ハ、五百尾以上を養ふべし、故ニ次年三年に至れバ、皆此割合に從ひ、其尾數を減ぜざるを得ず、満一箇年を經れバ、大抵八寸より一尺餘に成長すべし、然れども、之を河水及び、死水に畜養する時ハ、氣候に感じ易く、且暑氣に至れバ、其水の暖に過ぎ、適宜の度を失ふものとす、故に、華氏驗温器六十度以下、四十度以上の、湧水を擇み用ふべし、また之を河流に放ち、繁殖せしむるにハ、春季三月より、五月に至る頃、河水中に餌物の生ぜしときをよろしとす、又養魚室ハ、水源より、稍低所に設け、その距離方向を圖り、適宜に、水を、其室内に導く様、建築せざれバ、諸機械を排列するに不便を生するものなり、其室内にハ、烈しく光線の映射するを忌み、且つ、水獺・鼬鼠・等の外患を豫防すべし、其諸機械を製する木材ハ、浮爛・羅勒・扁柏・杉等を吧嗎油にて塗り、又ハ焼焦すべし、而して養魚室を設くる地ハ、斜傾にして、池水の能く流通し、且つ池を増設するに便なる所を良とす降雨其他水害の為め、汚水の注流する患あるときハ、週圍に溝渠を穿ち、以て之を防ぐべし、

※孑孑(ぼうふら)
※蝌蚪(かと オタマジャクシの別名)